第9回ひのとり連携会を開催しました
8月25日(火)に、ひのとり連携会を開催しました。
今回もケアマネジャー、訪問看護師の多職種の皆さまにご参加いただきました。
お忙しい中ご参加いただき、誠にありがとうございました。
【 今回の講演テーマ 】
今回のひのとり連携会では、在宅療養を支えるうえで知っておきたい医療の知識と、多職種で患者様・ご家族を支えるための連携について学びました。
今回の講演テーマは、以下の3つです。
① 生活を立て直すための特別訪問看護指示書の活用
② 医療と介護の勉強会~相互理解の先にある連携~症候の見方シリーズ「急性腹症」
③ 事例発表~「痛い、でも家にいたい」を支える~
① 生活を立て直すための特別訪問看護指示書の活用
講師:みんなのかかりつけ訪問看護ステーション名北店 野々垣秀幸様
特別訪問看護指示書とは、患者様の状態が急激に悪化した場合など、通常よりも頻回な訪問看護が必要と医師が判断した際に交付される指示書です。
通常の訪問看護では、ケアプランなどに基づいて訪問頻度が決められますが、特別訪問看護指示書が交付されると、原則14日間、必要に応じて毎日の訪問看護を行うことができます。急性増悪時や終末期、退院直後など、短期間に集中的な支援が必要となる場面で活用されています。
今回の講演では、制度の基本的な説明だけではなく、実際の事例を通して「どのような場面で特別訪問看護指示書を活用できるのか」を具体的に学びました。
事例から考える特別訪問看護指示書
紹介された事例の一つは、70代女性で、脊柱管狭窄症や統合失調症、2型糖尿病の既往がある方でした。
糖尿病が悪化し、血糖コントロールが不良となったことをきっかけに、特別訪問看護指示書が発行され、14日間にわたって毎日の訪問看護が行われました。
訪問看護では、血糖測定やインスリン注射をご本人が安全に行えるよう、手技を記載したパンフレットを作成し、看護師が見守りながら繰り返し練習を行いました。
その結果、血糖測定についてはご本人が一人で行えるようになった一方、インスリン注射については、エアー抜きや消毒を忘れてしまったり、正確なインスリン量を設定することが難しかったりするなど、自己管理を続けるにはリスクが残ることが分かりました。
そこで訪問看護師から往診医へ状況を報告し、チームで検討した結果、インスリン注射による治療は中止し、内服治療と食事療法によって血糖コントロールを行う方針へ変更されました。
この事例からは、特別訪問看護指示書を「毎日訪問してもらえる制度」として捉えるだけではなく、短期間に集中的に関わることで、患者様がどこまでできるのか、どのような支援が必要なのかを評価し、その後の治療や生活の方向性を考える機会にもなることを学びました。
退院直後の「生活混乱期」を支える
もう一つ紹介されたのが、退院直後の「生活混乱期」における特別訪問看護指示書の活用です。
病院では安全に整えられた環境の中で生活していても、自宅に戻ると住環境や生活リズム、医療・介護のサポート体制などが大きく変わります。
そのため、退院直後には生活レベルが一時的に低下したり、転倒や再入院のリスクが高くなったりすることがあります。スライドでは、この時期を「生活混乱期」と表現し、訪問看護や訪問リハビリを集中的に導入して、できるだけ早く安全な在宅生活を整えることの重要性が紹介されました。
また、病院と自宅では、住環境や医療設備、医療従事者によるサポート体制にも大きな違いがあります。
だからこそ、退院後の生活を実際に確認しながら、
- 生活環境を整える
- 福祉用具を選定する
- 身体機能・生活能力を維持、向上する
といった支援を早期から行うことが大切です。
特別訪問看護指示書によって訪問看護を集中的に行える期間を、単に医療的なケアを増やす期間とするのではなく、「その人が自宅で安心して生活できる状態をつくる期間」として活用するという考え方が、とても印象に残りました。
在宅医療では、病気を治療することだけがゴールではありません。
患者様がその人らしい生活を続けるために、今何が必要なのか。
医療職だけでなく、ケアマネジャーやリハビリ職、介護職などがそれぞれの視点から情報を持ち寄り、必要な支援につなげていくことが大切です。
今回の講演を通して、特別訪問看護指示書は「状態が悪くなったときに訪問看護の回数を増やすための仕組み」というだけではなく、患者様の生活をもう一度立て直し、次の生活につなげるための大切な選択肢であることを学ぶことができました。
https://kakaritsuke.co.jp/
↑みんなのかかりつけ訪問看護ステーション様のHP
https://www.instagram.com/meihoku.kakaritsuke/
↑みんなのかかりつけ訪問看護ステーション名北店様のInstagram
②医療と介護の勉強会~相互理解の先にある連携~症候の見方シリーズ「急性腹症」
講師:ひのとり整形在宅クリニック 医師・院長 鴨下友彦
2つ目の演題では、「急性腹症」をテーマに、在宅療養中の患者様に腹痛などの症状が出た際、どのように状態を評価し、その後の治療につなげていくのかについて講演が行われました。
在宅療養中の患者様に「お腹が痛い」という訴えがあったとき、その原因はさまざまです。
単なる便秘や一時的な腹部不快感の場合もあれば、胆石・胆嚢炎や腸閉塞など、早期の判断や治療が必要となる疾患が隠れていることもあります。
そのため、在宅医療では「痛い」という症状だけを見るのではなく、いつから、どのように痛むのか、排便や食事摂取はどうか、嘔吐はないかなど、普段の状態との違いを丁寧に確認することが重要になります。
今回の講演では、急性腹症の特徴的な症状や病態、治療について解説するとともに、在宅で対応できるケースと、病院での検査・治療が必要となるケースについてもお話がありました。
また、在宅医療では病院への搬送が必要かどうかを判断する際に、医学的な重症度だけでなく、患者様ご本人がどのような治療を望んでいるのか、そしてご家族や介護環境を含めて在宅での療養が可能なのかという視点も重要になります。
「病院で治療することが医学的には望ましい」と考えられる場合でも、患者様がどのような生活を望んでいるのかによって、治療方針の考え方は変わります。
医療的な判断と患者様の意思、その両方を踏まえて今後の方針を考えること。
それが在宅医療における重要な役割の一つであることを学ぶ機会となりました。
③ 事例発表
今回の事例発表では、胆管結石が疑われる患者様の在宅管理をテーマに、実際の症例をもとに多職種で検討を行いました。
患者様は74歳の男性で、胆石・胆嚢炎があり、要介護2。独居で、移動は伝い歩き、食事や排泄は自立されていました。
経過の中では夜間に腹痛が出現し、浣腸を行っても排便がない状態が続きました。その後の診察や採血、エコーなどの結果から胆石・胆嚢炎と診断され、在宅で治療を継続しながら経過をみることとなりました。
この患者様が大切にされていたのが、「病院には行きたくない」というご本人の思いでした。
そこで今回の事例検討では、
「痛い、でも家にいたい」という患者様を、在宅チームとしてどう支えるか?
というテーマで、多職種で意見交換を行いました。
検討の中では、訪問看護師の立場から、まずは痛みの程度や経過、生活状況を丁寧に評価しながらクリニックと連携し、疼痛コントロールを図っていくことが重要だという意見がありました。
また、痛みだけを見るのではなく、食事や睡眠、移動など生活全体への影響を確認し、その情報をケアマネジャーや他のケア職と共有することで、福祉用具の導入やサービス内容の見直しなど、生活面からの支援につなげていくことも大切です。
ケアマネジャーからは、現在利用しているサービスに過不足がないかを評価するとともに、医療側から得られた情報を他のケア職にも共有し、「今どういう状態なのか」をチームで理解したうえで安心して介入できる環境をつくることが重要だという意見が出ました。
また、
「利用者様から一晩中『痛い』と訴えの電話があった場合、訪問看護にお任せしていても大丈夫ですか?」
という質問もありました。
これに対して訪問看護師からは、痛みの訴えそのものが重要な医療情報であり、疼痛評価のためにも大切な情報であること、そして訪問看護としても患者様に寄り添いながらしっかり対応するので、安心して任せてほしいという回答がありました。
こうしたやり取りからも、医療と介護がお互いの役割を理解することが、患者様の安心につながることを改めて感じる時間となりました。
「家で過ごしたい」という思いをどう支えるか
今回の事例では、治療方針についてもACPの考え方が話題となりました。
患者様の希望は、一度確認したら終わりではありません。
病状が変化したとき、治療を受ける中で気持ちが変わったときなど、その都度、ご本人の思いを確認し、尊重していくことが大切です。
そして、その意思決定を患者様と医療者だけで共有するのではなく、実際に生活を支えているケアマネジャーや訪問看護師、介護職など、患者様に関わるすべての職種で共有することが重要だという認識を多職種で確認しました。
今回の患者様は認知症がなく、ご自身で意思決定ができていたことも、在宅での治療方針を考えるうえで大きなポイントとなりました。
「痛みはある。でも、できれば家にいたい。」
その思いをどうすれば叶えられるのか。
医療的な安全性だけではなく、患者様の価値観や生活、介護環境まで含めてチームで考えること。
今回の事例は、在宅医療だからこそ考える必要がある「その人にとっての最善とは何か」を、多職種で考える貴重な機会となりました。
◆ 最後に
今回のひのとり連携会では、特別訪問看護指示書、急性腹症、疼痛管理、ACPと、さまざまなテーマについて学びました。
一見するとそれぞれ異なるテーマに見えますが、共通しているのは、
「患者様が安心して生活を続けるために、医療と介護がどう連携するか」
ということです。
在宅療養では、医療職だけでは解決できないことがあります。
反対に、介護職だけでは判断が難しい医療的な問題もあります。
だからこそ、それぞれの専門職が持っている情報や視点を持ち寄り、患者様・ご家族の思いを中心に、チームでこれからの生活を考えていくことが大切です。
これからもひのとり連携会を通して、地域の皆さまと学び合い、「顔の見える関係づくり」と「安心の共有」を大切にしながら、より良い在宅療養支援につなげていきたいと思います。
ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。
【関連記事】
訪問診療で考える緩和ケアとACP ~多職種で支える最期までその人らしい暮らし~

↑ひのとり連携会の様子

↑ひのとり整形在宅クリニック 医師鴨下院長の講演中の様子

↑ひのとり整形在宅クリニック ソーシャルワーカー 佐藤氏の講演中の様子

↑ひのとり連携会の会場の様子
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