第23回のひのとり検討会を開催しました。
ひのとり検討会は医師、コメディカル、ケアマネジャーが集まって医療と介護の一元化を目指し、それぞれの職種の役割の理解を深めるためにひのとり検討会を開催しています。
今回は、ソーシャルワーカーの神保さんより、「服薬管理が難しい高齢ご夫婦の支援」についてのお話がありました。
私たちが日々支援する中でも、認知症や体力の低下が進む高齢者の「薬の管理」は、特に悩ましい課題のひとつです。
今回は、夫婦ふたりで在宅生活を送っていたあるご家庭のケースから、支援の工夫や考え方を一緒に振り返ってみたいと思います。
◆ 夫婦で暮らす、認知症の奥様と高齢のご主人
今回ご紹介されたのは、88歳のご主人と87歳の奥様。奥様は脳梗塞で入院し、退院をきっかけに訪問診療がスタート。
ご主人も同日に訪問診療の対象となりました。
奥様は退院当初、なんとか伝い歩きで移動ができていたものの、記憶力や理解力の低下があり、薬の飲み間違いや飲み忘れが目立っていました。
ご主人に尋ねて間違えて飲んでしまうこともありました。
一方のご主人も、認知機能の低下が見られ、自分の薬と奥様の薬を混同したり、効き目が感じられないと自己判断で多く飲んでしまうなど、ご夫婦ともに服薬管理が難しい状況でした。
◆ 支援をしている中での出来事
そんな中、奥様が深夜に転倒してしまい、救急搬送されることに。転倒の原因ははっきりしませんが、ご主人が自身の睡眠薬を奥様に渡してしまった可能性も否定できず、服薬ミスによる影響の可能性も指摘されました。
その後、奥様は入院・転院を経て、会話はできるものの、ADL(日常生活動作)は大きく低下してしまいました。
ご主人は「また自宅で一緒に暮らしたい」と希望され、チームは自宅退院の可能性も含めて支援を再構築することになりました。
◆ 「在宅生活」を再び叶えるために
在宅復帰を目指して、さまざまな工夫が行われました。
■ 住環境の見直し
ポータブルトイレの設置
車いす移動がしやすいよう、段差にスロープを設置
室内扉の撤去など、生活動線をシンプルに
■ サービスの調整
デイサービスの利用回数を増やし、日中の見守りの目を増やす
必要に応じて、介護保険の区分変更も検討
◆ 服薬管理の工夫もたくさん
服薬トラブルを防ぐため、さまざまな支援が導入されました。
薬の一包化(1回分をひとまとめにしておく)
袋に名前と日付を記載
カレンダーや張り紙で服薬を促す
デイサービスでの昼薬対応、訪問看護・ヘルパーでの夜間の確認
ご主人の薬もカレンダーで管理
ご本人たちだけでは判断が難しいことも多いため、キーパーソンの甥御さんにも情報共有を行い、家族と連携して支援を進めました。
◆ 最後に:在宅生活を支える“チーム”の力
このケースから見えてきたのは、高齢者ふたり暮らしのリスクと、それを支えるチームの連携の大切さです。
一人ひとりの力だけではどうにもならないことでも、
「どうしたら安全に暮らせるだろう」
「この人らしい生活を続けるには何が必要だろう」
と多職種で話し合い、少しずつ形にしていくことが、在宅生活の継続につながっていくのだと思います。
ひのとり整形在宅クリニックでは、医師・看護師・リハビリ・ケアマネ・ソーシャルワーカーが力を合わせて、患者さんとご家族にとって“ちょうどよい支援”を考え続けています。