第22回のひのとり検討会を開催しました。
ひのとり検討会は医師、コメディカル、ケアマネジャーが集まって医療と介護の一元化を目指し、それぞれの職種の役割の理解を深めるためにひのとり検討会を開催しています。
今回は、看護師の加賀さん・小橋さん・山田さんより、「テリボン」という骨粗鬆症治療のお薬を在宅で導入したケースについて紹介がありました。
「テリボン」と聞いても、あまり耳なじみがないかもしれません。でも、実は骨を強くするためにとても効果的な注射薬なんです。
◆ テリボンってどんな薬?
テリボンは、骨をつくる細胞(骨芽細胞)を元気にしてくれるお薬で、骨粗しょう症による骨折の予防に使われます。
・週1回の通院注射または
・週2回の自己注射
で治療を続けていきますが、骨をつくる過程(骨形成)を促すことで、骨密度を高め、骨折のリスクを減らしてくれます。
特に「骨がスカスカになっていて、これ以上骨折すると寝たきりになるかも…」というようなご高齢の方にはとても大事な治療のひとつです。
◆ テリボンを自宅で使うときの注意点
テリボンは冷蔵保存が必要です(2〜8℃)。温度が高いと薬の効果が落ちてしまうため、冷蔵庫での管理が必須になります。
また、保険適用の範囲が「208本まで」と決まっており、それ以上は自己負担になります。
◆ とあるご利用者さんの例(80代・女性)
ある80代の女性のケースが紹介されました。
この方は、背骨の圧迫骨折が何度もあり、骨密度も非常に低い状態(YAM値:股関節55%、腰椎71%)。認知症やてんかんもあり、娘さん(発達障害がある)と二人暮らしをされていました。
■ 経過の流れ:
昨年の春、転倒して左肩を痛めたのをきっかけに、通院で週1回のテリボン注射を開始。
いったん「イベニティ」という別の薬に切り替えましたが、通院介助の負担が大きくなり、訪問診療へ切り替え。
ご家族と相談のうえ、6月から週2回の自己注射テリボンに変更となりました。
◆ テリボン導入でぶつかった壁
でも、いざ自宅でテリボンを使おうとすると、こんな問題が出てきました。
・認知症があるため、ご本人が自分で注射するのは難しい
・娘さんのサポートも難しい
・金銭的な理由で訪問看護が導入できない
・デイサービスに頼もうとしたら、看護師さんが常駐していない
このように、「自宅で注射する」ためには、意外とハードルが多いんですね。
◆ 乗り越えた工夫と支援
そこでスタッフたちは知恵をしぼり、次のような対応を行いました。
訪問薬剤指導を導入 → ご自宅でも安全に冷蔵保管・管理ができるようになった!
デイサービスでの投与を提案 → 看護師の協力を得て、投与体制を確保
自己注射できるように指導 → スタッフと一緒に練習し、できることが少しずつ増えた!
このような形で、ひとつひとつ壁を乗り越えながら、その人らしい生活を支えるお薬の導入ができたのです。
◆ こんなトラブルも…
これまでには、
冷凍してしまった
注射器を紛失した
スタッフ間での連携ミス
手技ミスによるトラブル
といったこともあったそうです。
でも、それらの経験を活かして、今では事前チェックや情報共有の体制がどんどん整ってきています。
◆ 最後に
注射や薬の管理って、慣れないうちはとても不安ですよね。
でも、在宅でも安心してテリボン治療を続けられるように、ひのとりチームでは環境整備や支援体制をしっかり整えています。
「この方にはどんな方法が合っているかな?」「どこで、誰がサポートできるかな?」と、みんなで考えながら支えることで、ご本人もご家族も安心して治療が続けられるようになるのです。
今後とも勉強会等を通じ、医療と介護の一元化を目指して努めて参りますので、ひのとり整形在宅クリニックをよろしくお願いいたします。