第20回のひのとり検討会を開催しました。
ひのとり検討会は医師、コメディカル、ケアマネジャーが集まって医療と介護の一元化を目指し、それぞれの職種の役割の理解を深めるためにひのとり検討会を開催しています。
2月のひのとり検討会では、理学療法士の永田さんから「ニーズの理解と目標設定のプロセス」についての発表がありました。
患者さんの“こうなりたい”という希望(ホープ)と、私たち支援者が考える“こうなるべき”という必要(ニーズ)には、時にギャップがあります。そのギャップをどう埋めていくか——とても奥が深く、やさしさが求められるテーマです。
◆ ホープとニーズ、何が違うの?
よく使う言葉ですが、意外と混同しやすい「ホープ」と「ニーズ」。
ホープ:患者さん自身が思っている“こうしたい”という気持ち
例:「もう一度、自分で料理がしたい」
ニーズ:専門職が見立てる“できるようになってほしいこと”
例:「料理のためにはまず立つ・歩く・移動する力が必要」
どちらも大切ですが、患者さんの“思い”を無視してしまうと、リハビリの意欲も続きません。
◆ 「ホープの真意」を探る
「料理がしたい」と言っても、それは“立って台所に立つこと”がしたいのか、“車いすでも自分の分だけ作れればいい”のか、意味は人それぞれ。
ある方は、「家族に迷惑をかけたくない」「家での役割を持ちたい」といった背景をお話しされていました。こうした“ホープの真意”を見つけるためには、日ごろの会話や観察がとても大切になります。
◆ 動作の“階層性”から考える
たとえば「料理がしたい」という希望があったとき、それは比較的難易度の高い「手段的日常生活動作(IADL)」にあたります。そのためにはまず、「立ち上がる」「移動する」などの基本動作が安定していなければなりません。
セラピスト側は、“今の状態で、何を優先して整えれば、その希望に近づけるか”を整理する必要があります。
◆ 実際の症例:40代女性のケース
ご紹介いただいたのは、脊髄腫瘍の手術後に下肢機能に障がいが残った40代の女性。ご家族(ご主人と小学生の息子さん)と3人でマンションにお住まいです。
ご本人の希望はこうでした。
「短い距離でもいいから、杖で歩きたい」
「息子の卒業式に出席したい」
卒業式は体育館の2階で行われるため、「階段を自分で上がること」が大きな課題でした。
◆ 一緒に描いた“現実的な目標”
電動車いすを使っての外出は問題なし。ならばリハビリの目標は…
階段(20段)の昇り降りができるようになること
室内で短距離の杖歩行ができるようになること
訓練を重ねた結果、卒業式には無事参加され、階段もご自身で昇り降りができたそうです。
杖での歩行はまだ5m往復がやっとの段階でしたが、ご本人の中では「できたこと」「まだ難しいこと」が整理され、次の目標も自然に生まれてきたとのことです。
◆ まとめ:寄り添うリハビリをめざして
患者さんの言葉の奥にある気持ちを汲み取り、階段的にできることを増やしていくことが大切だと考えています。
モチベーションを保てるような関わりを通して、少しずつ、でも確実に“その人らしい暮らし”に近づいていけるかかわりを目指し、
ひのとり整形在宅クリニックでは、リハビリスタッフも医師や他職種と定期的に情報共有しながら、その人に合った目標設定に取り組んでいます。
患者さんの“したいこと”を、現実の中でどう叶えていくか。これからも、丁寧に考え続けていきたいテーマです。
今後とも勉強会等を通じ、医療と介護の一元化を目指して努めて参りますので、ひのとり整形在宅クリニックをよろしくお願いいたします。