第19回 認知症の夫婦が「自分らしく生きる」ためにできること 〜

第19回のひのとり検討会を開催しました。

ひのとり検討会は医師、コメディカル、ケアマネジャーが集まって医療と介護の一元化を目指し、それぞれの職種の役割の理解を深めるためにひのとり検討会を開催しています。
1月のひのとり検討会では、ケアマネージャーの市川さんから「認知症の夫婦の意思決定」についての症例が紹介されました。
高齢化が進む今、決して他人事ではない内容です。
今回は、そのお話を通して、私たちにできる支援を一緒に考えてみたいと思います。

◆ 認知症のご夫婦が地域で暮らすということ
紹介されたのは、80代のご夫婦。おふたりとも数年前から認知症の症状が見られ、地域包括支援センターの介入をきっかけに、訪問診療や看護などの支援が始まりました。
最初のころは、奥様がしっかりされていて、家事や金銭管理も担当されていましたが、徐々にその役割も難しくなってきました。
今では、服薬の管理や清潔ケアなど、日常生活の多くの場面で介助が必要な状態に。

◆ 「自分たちはまだできる」と思っていても…
郵便物や書類はヘルパーやケアマネジャーが関わりながら整理できるようになりましたが、金銭面については「自分たちでできている」というご本人の認識があり、なかなか支援につながりにくい状況が続いています。

でも実際には、判断力や手続き能力の低下が進んでおり、「このままで本当に大丈夫かな…?」とまわりは不安を感じていました。

◆ 「権利擁護」という考え方
このような場合、大切になるのが「権利擁護」という視点です。
認知症が進んでも、ご本人の思いや希望をできるだけ尊重しながら、不利益や混乱を防ぐために支えること。それが、医療・福祉職の役割でもあります。

市川さんからは、以下のような支援の選択肢が紹介されました:

① 権利擁護センター
金銭や財産の管理を代行する機関。利用には本人の同意が必要で、開始まで3か月ほどかかるのが難点。

② 身元保証会社
病院や施設との連絡窓口としての役割を果たします。サービス内容は会社ごとに異なるため、選定が難しい面も。

③ 成年後見人制度
判断力が低下した方のための法定代理制度。契約や財産管理を代行できますが、途中でやめることはできません。

※ただし、これらの制度では、医療行為に対する同意(手術など)は本人以外できないという制限があります。

◆ 「自宅で過ごしたい」という思いを支えるには?
今回のケースでは、ご夫婦ともに「できるだけ自宅で暮らしたい」という希望を持っておられます。

その願いを支えるためには、

・医療・介護職とのこまめな情報共有(ACPやエンディングノートの活用)

・緊急連絡先の確保

・必要に応じた介護保険外サービスの検討

・地域包括支援センターとの連携

といった、日々の暮らしを見守り、支える体制づくりが欠かせません。

◆ 最後に
認知症になったからといって、「決める力」がすべてなくなるわけではありません。

少しずつ難しくなることがあっても、今このときをどう過ごしたいか、何を大事にしたいかという気持ちは、きっと持ち続けているはずです。

「その人らしく生きる」ということを、医療や介護、地域みんなで支えていけるよう、今後も連携を大切にしていきたいと思います。

今後とも勉強会等を通じ、医療と介護の一元化を目指して努めて参りますので、ひのとり整形在宅クリニックをよろしくお願いいたします。